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松岡徹のバルセロナ日記 24 最終章


2005.7/26


バルセロナの一年がもうすぐ過ぎようとしています。残すところ今日一日。 最後の日ぐらいこのサンフィリュの町でゆっくり散歩でもして過ごそうと思っていたのに、午後からアルベルト (バルセロナ大学教授) に呼び出され、今年11月に予定している名古屋芸術大学ギャラリーBEの個展の打ち合わせをすることになりました。世話にもなったし帰る前に会いたかったので昨日まで毎日電話して探していたのに、本人はずーーーっとバカンスでタラゴナの別荘におったらしい。いつもギリギリ。魅力的だし大学内でも一目置かれる存在で、その分問題も多い人。この人が日本に来たらいったいどうなるんだろう? 考えただけでおもしろいですが、それが自分にいろいろ降り掛かってくる事を想像すると恐ろしくなります。展覧会の関係者の方はそのつもりで。しかし作品はきっと喜んでもらえると思います。彼が問題なくちゃんと日本に来てくれたらの話ですが。
 
帰国前からいくつか仕事をいただき、すでに帰国後のことで頭がいっぱいになっている今日この頃ですが、すこしこの一年を振り返ってみようかと思います。 ほんとうは帰ってから振り返る方がいいのですが、たぶんバタバタしてできないと思うので、アルベルトの家に行くまですこしの時間に思い返してみようかと思います。自分がどんな気持ちでバルセロナに来たのか、どんな事を感じたか、なにか発見はあったのか、気がついたか、反省したか、成果はあったのか、失ったものはあるか。バルセロナ日記をはじめから読みなおしながら、ごちゃごちゃの脳みそを落ち着かせて自分会議です。
 
この日記にはその時あったことを思いつくまま書いてきました。今読むと稚拙で恥ずかしい文面ばかり。しかも後半はモロッコ、オランダ、ベネチア、パリ、 などまるで旅行三昧のバカンス野郎のバカ野郎です。しかし僕がこの一年で得たと思える事は、日記と日記の間にあるような気がします。文章を書くのは苦手なので事の本質を書く事が難しいというのもありますが、書いた事で本質の入り口をあちこちに残しておけたように思います。そう言う意味でも日記を書いてきて良かったです。
 
海外で暮らすというのはそれだけで多くの問題にぶちあたります。もちろん問題の多くは自分の場合不勉強、不努力によるところが多いのですが、他にもビザの申請、入学手続きなどこっちに来るな! と言わんばかりの厳しさ、複雑さがありました。そんな追い込まれた時の日記などには、おちゃらけた文面の最中に暗く沈んだ自分を発見する事もあります。なによりそうやって追い込まれ深く沈んだことで、自分の深み (大して深くないが。遠浅) をのぞく事もできました。しかし私の場合、幸運にも多くの友人の助けがありました。日本でも思う事ですが、自分には不釣り合いと思える助けがいつもあります。
 
結果として分かりやすいのは体重がほとんど変わらなかったとこです。食が細る暇もないほどみんなに良くしてもらったという事。これは友人たちだけでなく、その両親や知人にさえ気にかけてもらい、いつもあちこちのお宅に訪問 (押しかけて、あるいは押し込められて) して、時には友人の両親と3人でカタルニアのお昼のドラマをまるで家族のように一緒に見ながら食事なんてことも時々ありました。もちろん体重の問題は一つの例にしか過ぎません。つまり思い切りこの国の人情に甘えさせていただいたという事です。もちろんこのやさしい国だって多くの差別もあるし冷たい一面もかいま見ましたが、いつも優しさや気遣いの中にいる自分の存在を感じる事ができたことは、本当に感謝しなくてはいけません。
 
結局のところ、自分はなにも変わっていません。たった一年の事です。あるのは周りが助けてくれて今日自分がバルセロナに来て本当に良かった、と感じられている幸運です。ここからあとは本質の入り口から作品を作る作業です。それが日本に帰ってからの仕事になります。立派な作品は作る事はできませんが、おもしろい作品なら少しくらいはできそうな気がします。自分の形に似合った仕事をこつこつ続けていきたいと思います。 思いは尽きませんがあとは自分の心の中にしまっておきます。もしゆっくりお話しする機会があればなんでも聞いて下さい。バルセロナのおいしい店とか行きつけのBarとか、パン・コン・トマテの作るコツとか鍋でお米を炊くコツとか。
 
一年間バルセロナ日記につき合って下さってありがとうございます。 これからも時々日記を書こうかとほんのすこし思っております。また勝手に書き始める事があるかもしれません。いきなりで失礼ではありますが、今後もよろしくお願いいたします。日本で、展覧会場で、お会いしたいと思います。それではその時に。
 
Hasta la vista,ustedes.
Muchas gracias.
 
Toru Matsuoka
 
松岡徹  2005年7月26日 バルセロナ晴れ
 

 
 
 
  ホセとイサ。隣に住む陽気なアンダルシ
  ア人夫妻。とにかく人情深い。下町の人。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  ジャウマの両親。よく昼ご飯をごちそうに
  なりました。またあのズッキーニの極上
  スープが飲みたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  リュイスの子ゴウとホセの子ミゲルとリカ
  ルドの双子の兄弟。 とにかくやつらにも
  てあそばれた。元気で素直。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  いいアトリエでした。ありがとう。
 

 
 


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