三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2003 祭りとアートに出会う島
 

弘法巡り+アート・ピクニック2003
キッズ・サポーター リポート
2003年5月9日(金)
『弘法巡り+アート・ピクニック』開催前日のこと

●キッズ・サポーター誕生
『弘法巡り+アート・ピクニック』前日、アーティストは作品の最終調整に、スタッフはさまざまな準備に追われていた。そこにやってきたのが佐久島小学校の6人の児童。彼らは、島でおこなわれるイベントの強力な助っ人としてかけつけてくれた。「子どもたちが住み、学ぶ島をもっと元気にするために、子どもたち自身で考え、体験できる場を」と、小学校から有難い協力の申し出があったのは数日前のこと。
 
そこで、単なるお手伝いではなく、何か子どもたちが島を見つめなおす経験を、それも楽しい経験をいっしょにつくろう、と私たちは考えた。そして、まず子どもたちひとりひとりの名前を覚えるために、名札を用意した。名札には、「弘法巡り+アート・ピクニック キッズ・サポーター」の文字を入れた。子どもたちはサッカーが好きだ。「サポーター」という言葉はもちろん知っている。ちょっと照れくさそうな顔をしながら、受け取った名札に名前を書き入れた。
 
●そのことの意味を伝えること
キッズ・サポーターの6人の中には、昨年の『弘法巡り+アート・ピクニック』のための看板設置を手伝ってくれた子どもも何人かいた。昨年は、大学生のボランティアたちがルート内の案内看板を制作、スタッフが設置場所を決めたのだが、それを手伝ってくれたのも佐久島小学校の子どもたちだった。
 
子どもたちには、大学生ボランティアと交流をしながら、島のことを人に伝えることを経験してもらいたいと考え、「大学生のお兄さん、お姉さんが迷子にならないように、道案内をしてね」とお願いしただけだったが、子どもたちは誰に言われるでもなく、ルート内に落ちているゴミを拾い集めていたのがとても印象的だった。私は単純に「しつけのいい子どもたちだなぁ」と思ったのだけれども、同行した者が「恥ずかしかったんじゃないかな? 島の外の人といっしょに島を歩いて、それで島にゴミが落ちているってことが」というのを聞いて、そうかもしれないと思った。
 
今年、子どもたちがお手伝いをしてくれるのだったら、ルート内を改めて歩いて、島を外の人の目線で見つめなおしてもらおう、昨年のできごとがヒントを与えてくれた。集まってくれた子どもたちに話したのは、弘法さんが島の伝統的な文化であることと、島の自然はすばらしいということ、そのことをたくさんの人に知ってもらおうよ! ということ、そして、気持ちよく島を歩いてもらうために、キッズ・サポーターにできることはたくさんあるよ、ということだった。
 
●いつもと違う視点で島を歩こう
弁天サロンに集合したキッズ・サポーターたちは、引率の先生3名とともに空っぽのゴミ袋を持って『弘法巡り+アート・ピクニック』のルートを歩き出した。ルートの案内と、ルート内数ヶ所に設置されている木村崇人作品の説明のためにオフィス・マッチング・モウルの池田とインターンの山口が同行。まずは、弁天サロンすぐそばにある崇運寺の『ガリバーの目』に向かう。
 
残念ながら『ガリバーの目』はまだ調整中で最終段階の作品は見てもらえなかった。「ちぇーっ」と不満気な子どもたちに「明日は見られるから絶対来てね!」と池田。でも、謎の装置『ガリバーの目』は、何となく子どもたちの興味を引いたようだ。翌日やってきた彼らは熱烈的反応を見せるが、それはまた別の話。一行は、うららかな5月の佐久島を、のんびり歩いて次のチェック・ポイント『海の風見鶏』のある白浜海岸方面へと向かった。ここまでは、ちょっとお散歩気分。
 
●流れ着くのは椰子の実ひとつ…ではない
佐久島の南東に渥美半島が見える。かつて島崎藤村は、その突端である伊良子岬で「名も知らぬ遠き島より流れよる椰子の実ひとつ」と詠った。けれど、今、佐久島に流れ着くのは、南の島からロマンを届ける椰子の実ではなく、本土から押し寄せるペットボトルなどの大量のプラスチックゴミだ。島の浜辺を歩くと、場所によって(海流の関係だろう)はそのゴミの多さにうんざりしてしまう。これらは、決して佐久島の島民がちらかしているゴミではないのだ。そして、過疎化・高齢化した島民たちにとって、本土から際限なく押し寄せるゴミの処分は理不尽な負担となる。
 
美しい島の自然と都会から流れ着くゴミ。簡単には解決しない問題ということに気づき、海岸に漂着するゴミに嫌気を 感じているキッズ・サポーターたちは、今回またゴミを拾うことで、島への愛着を 一層深めていってくれるのでは? と自然と思うことで心が安らぐ。そして、もくもくとゴミを拾う彼らの姿を見て、本土に住む人たち(もちろん私も含めて)には、たぶん知らなかった現実を見つめてほしいと思った。子どもたちが持つ空っぽのゴミ袋はみるみるいっぱいになっていく。そして、『海の風見鶏』へと続く道は、みるみるきれいになっていく。キッズ・サポーターたちが、このきれいになった道を楽しげに歩く人たちの姿を思い浮かべてくれるといい。想像力を遠くへ、もっと遠くへと飛ばせてほしい。
 
●さて、アート。子どもたちには冒険を
ゴミでいっぱいになった袋を弁天サロンへ持ち帰り、島民有志からねぎらいの差し入れジュースでちょっと一服した後、キッズ・サポーターたちは、ルート内を西集落へと入る。ここで、ゴミ拾いも一服。今度は「弘法巡り+アート・ピクニック」のアート部分を巡ることになった。最初に訪れたのは、平田五郎制作の『大葉邸』。「大葉邸に来たことある人」「はーい」元気に手があがる。ほとんどの子どもたちがすでに大葉邸を訪れていた。「じゃあ、中に入ったことある人」ちらほらと手があがる。「じゃあ、中に入ってみたい人」またまたいっせいに元気な手があがる。
 
鍵をあけ、戸を開けて「入っていいよ」というと、中が真っ暗なので子どもたちは「おばけが出るよ」「大葉邸じゃなくてオオバケーだ」などと、口々にいう。思い切ってひとりが入ると、ぱっと明かりが点く。センサーになっているのだ。男の子ばかりなので、そういう部分の反応は大きい。なだれ込むように中に入ると、100年前から変わらない古い民家のたたずまいに、みんな興味津々のもようだ。先生たちは、懐かしさという子どもたちとは違う部分を刺激されていた。
 
ほとんど探検するみたいに、暗い奥の部屋に進むと、またセンサーで明かりが点き、一番奥にある漆喰で塗られた部屋にたどりつく。暗やみを進んで、真っ白な光の部屋にたどりつくまでの、短いけれどきわだった変化について、あえて説明のことばは不要だろう。子どもたちは、私たちの説明のことばをまたずに、すでにアーティストが用意した場の体験をやすやすとおこなっているのだから。
 
●ありがとう、キッズ・サポーター。島はきみたちのもの
次に訪れたのは、木村崇人の『現象の家』。最初の部屋に置かれた『潮の法則』という作品について、少し説明する。「佐久島が干潮の時、引いた潮はどこへいったかって考えたことある?」。小さな島に暮しているけど、地球の大きさで考えてみることはできるよ。みんながよく知っている潮の満ち引きでね、そういう説明だ。奥の真っ暗な部屋にあるもの、そこに映し出されたものが何かに気付くと、子どもたちの興奮は最高潮に達した。自然に空いている木の節穴がピンホールの役割を果たし、暗い部屋に外の風景を映し出しているのである。
 
それに気付くと、半分の子どもたちが外に飛び出し、映し出された風景の中に自分の身を置いてみる。手を振ったり、ポンホールの穴を探してのぞいたり。説明なんていらない。子どもたちは知っている。アーティストは、そこにあるけれど気付かない世界への扉を示す。扉を開けるのは、私たち自身だ。佐久島小学校の子どもたちは、そこにあった扉を大きく開き、向こうの世界に飛び出していった。
 
『大葉邸』と『現象の家』で、アートを探検した子どもたちは、ふたたびキッズ・サポーターに戻り、今度は「大山弘法みち」を通って、元気に小学校へ戻っていった。
 
 
 
【関連情報】
  弘法巡り+アート・ピクニック2003
  弘法巡り+アート・ピクニック2003 リポート

 
【同時開催】
  『木村崇人展 佐久島で地球と遊ぶ』

 
 
               弁天サロンの前で集合した佐久島小学校のキッズ・サポーターとスタッフ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
サポーターの活動について話すオフィス・マッチング・モウル内藤と子どもたち。ちょっと緊張気味?
 
 
 
 
 
崇運寺に設置された『ガリバーの目』に群がる子どもたち
 
 
崇運寺から白浜海岸へ向かう。5月の佐久島はどこも花でいっぱい
 
 
 
 
 
 
白浜海岸に打ち寄せられた大量のゴミは、本土から流れ着いたもの。子どもたちはひたすらにそれを拾い集める
 
 
草むらの中のゴミも見逃さないキッズ・サポーターたち
 
 
 
 
 
 
 
 
子どもたちの力で、本来の美しい海岸がよみがえる
 
 
 
 
 
「大葉邸」を「おばけ屋敷気分で探検」する子どもたち
 
 
 
 
 
 
 
「現象の家」だって子どもたちにはワンダーランド
 
 
 
◆ キッズ・サポーターふたたび
弘法巡り+アート・ピクニックはじまりの二日間、子どもたちはボランティアといっしょに参加者を迎える受付のお手伝いで、元気な笑顔を見せてくれました
 
5月10日(土)、東渡船場の受付で
 
5月11日(日)、弁天サロンの受付で
 
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■主催: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル

この道はいつか来た道?
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