三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2003 祭りとアートに出会う島
 
平田五郎展 『佐久島空家計画3/大葉邸』
制作リポート 1
前期:2004年2月7日〜16日
2月7日(土)

大葉邸の制作に必要な、山のような道具、材料を軽自動車に満載して、その隙間にボランティアの天野兄弟を乗せ、車で一路一色渡船場へ向かう。途中、スーパーマーケットに立ち寄り、3日分の食材(含む米10kg)もゲット。来るレジデンスで必要な準備のため、荷物運びと翌日からの作業段取りに追われた一日。
 
■ボランティア 2名/
 天野太一(名古屋造形大学)、天野陽史(名古屋芸術大学)

 
 
2月8日(日)

いよいよ作業開始。朝から、大葉邸の室内3部屋を床張りにするため、畳を取除いた床板をビスで固定し、床板の上に渡すネダを採寸して切る。丸鋸を使ったことのない天野兄弟とマッチングモウル内藤は、島の大工さんの指導を受ける。丸鋸の威力にびびる陽史と内藤。この日はまず兄、太一が初挑戦。陽史、内藤と午後から合流したぶうちゃんこと高木志瑞子さんの三人で、がんがんビス留めしてゆく。ぶうちゃんにとっては、初めての電動ドライバー体験。
 
名古屋から駆けつけてくれた社会人ボランティアの酒井さんは、マッチングモウル山口とともに、昼食づくり。この日のメニューは塩やきそばライス。一日かけて、ネダ部分をほぼ終了。しかし、丸鋸担当の太一が精密検査(スノボーで転倒して後頭部を強打失神した不安から)のためこの日、最終便で帰ってしまった。頼みの綱は明日来る予定の丸鋸経験有の尾野くんだが…。
 
■ボランティア 4名/天野太一、天野陽史、高木志瑞子(愛知県立芸術大学)、酒井敏子(名古屋市)
 
 
2月9日(月)

きゃー、尾野くんが風邪でダウンして来られない! という衝撃と床材になる杉板の山と丸鋸を前に呆然とする陽史と内藤&ぶうちゃん。しかも、最初にしなければならないのは、杉板の長手の端1センチを切り落とすという、初心者にとっては難易度の高い作業なのだ。「ええい、確か昨日大工さんはこう言っていた! と思う…。」と見よう見まねのチャレンジャー内藤。1本は確かにそこそこ上手く切れたが、緊張のあまりエネルギーが切れた…。
 
もうひとつのアクシデントは、昼には島に到着予定だった平田五郎が、全国ニュースにもなった新幹線の人身事故の巻き添えで運行停止になったまさにその電車に乗っており、車中で身動きの取れない状態であることが発覚。レジデンス初日から、一寸先はわからない現場の醍醐味を思い切り味わう羽目に…。けれど、マッチングモウル池田の車で予定より1便遅れただけでなんとか島にやってきた平田さんのおかげで、作業効率はぐ〜んとアップ。この日は、明日からの作業のために、ひたすらに杉板切り。ボランティアの杉本小百合さんと、脳の検査で異常なしだったため復活した太一を交えて、日が沈んでもしばらく作業は続いた。
 
夕食とミーティングの後、平田さんとは別の宿舎に泊まるボランティアを連れて島の西から東へ移動。途中、ボランティアがやってきたことを聞いた島の活性化の会の会長松本さんがみんなに会いたいということで、お宅におじゃまする。なんどもボランティアとして佐久島にはなじみのメンバーなので、すっかり打ち解けて楽しいひとときを過ごした。「こんなにいい子たちばかりで、涙がでるほど嬉しいよ」と、飲み物やお菓子をふるまってくれるその優しさにみんなも嬉しそう。帰りには、奥さんに島で採れた岩海苔の佃煮などをいただき、感謝感激。いろいろあった一日だったが、英気は養われた。
 
■ボランティア 4名/天野太一、天野陽史、高木志瑞子、杉本小百合(愛知県立芸術大学)
 
 
2月10日(火)

本日も二手に分かれて作業。平田班は、平田さんとぶうちゃん。真ん中の部屋の出窓になにやら、手を加えたり、土間にあるくどの補修作業に当たる。ボランティア班は、一番奥の部屋の板張りを完了し、入り口の部屋の板張り作業にかかる。
 
昨日は、少々もたついた丸鋸での材料切りもすっかり慣れたボランティアたち。杉板を壁際の微妙な出っ張りに沿わせて張っていくという、難易度の高い作業にもきちんと対応している。墨壺で線を引くのも、平田さんに教わってすぐにマスター。まったく頼もしいワカモノたちだ。夕方、大葉邸のある同じ西地区で、初夏頃にオープン予定の懐石料理屋の内装を手がけている島在住の家具作家の野田さんがあらわれ、懐石料理屋のオーナー水谷さんがつくる晩ごはんに、みんなを招待してくれた。島の食材はびっくりするくらいに美味しく、平田さんはじめボランティア一同大感激。食後には、野田さん夫妻、水谷さん夫妻と娘のキキちゃんとともに、大トランプ大会。めちゃくちゃ盛り上がって、楽しいひとときを過ごすことができた。キキちゃん曰く「平田さんってレレレのおじさんに似てる」…。すべてが充実した一日。
 
■ボランティア 4名/天野太一、天野陽史、高木志瑞子、杉本小百合
 
 
2月11日(水)

平田班は、一日かけてくどの内側をセメントで下地塗り作業。昨年、鬼の平田の下で、涙の左官修行をやりとげたぶうちゃんは、平田さんも褒める仕上げの上手さ。一方、ボランティア班は、入り口の部屋の板張りを95%終えた時点で材料がなくなる。追加の杉板が入荷するのは明日なので、本日は、庭の塀作業にとりかかることになった。
 
実は、庭の塀は大葉邸の一年目にいったん完成していたのだが、塀の裏にあったいい感じの廃屋が撤去されたため、大葉邸の庭からの眺めが殺風景になってしまったのだ。そこで、塀の高さをさらに高くすることになった。そこで、鉄筋を入れて塀の強度を増すことに。本日の「はじめての挑戦」は“振動ドリル”だ。島の大工さんの指導を受け、すでに出来上がっている瓦の塀の上部数ヶ所に穴を空ける。他にも、工具をつかって鉄筋を曲げるなど、初めての作業がいくつもあったが、ボランティアたちは順調にこなしていく。
 
まかないボランティアとして、ふたたび酒井さんが名古屋から駆けつけてくれたため、昼食はキムチ鍋でこれまた充実。作業も夕食も終わり、宿舎に戻ってお風呂に入った後、ボランティアの女の子チームが、台所でなにやらごそごそやっている。平田さんや、男の子ボランティア、お世話になっている島の人に、バレンタインデーのチョコレートを手づくりしていた。
 
■ボランティア 5名/
 天野太一、天野陽史、高木志瑞子、杉本小百合、酒井敏子

 
 
2月12日(木)

午前中、平田さんは、佐久島小学校でワークショップ「もようのある石っこうの板をつくろう」を指導。午前9時半〜12時まで、全校児童10名は楽しく作品づくり。子どもたちはできあがった作品に大喜び。平田さんがワークショップの指導をしている間、風邪が治った尾野くんもまじえたボランティア班には、庭の塀づくりに必要な砂の採取をしてもらった。
 
すでにワークショップの時から、撮影を始めていたメ〜テレ(名古屋テレビ)の取材班が午後から大葉邸の撮影に来るというので、ばたばたと昼食をすませて現場へ。大葉邸では、まず、入り口の路地をコールタールで塗る黒壁運動が取材されていた。潮風から家屋を守るために、佐久島ではペンキの代わりにコールタールが壁に塗られていた。そのため、島は黒い家並みによって、独特の景観をもっている。佐久島特有のその景観を保存するために島民有志によってはじめられたのが、黒壁運動だ。今回は、島民ボランティアのみなさんが大葉邸の外壁を塗ってくれるということで、学生ボランティアも壁塗りに参加した。島民の案内で大葉邸が紹介され、平田さんも取材を受けていた。このもようは、メ〜テレで、17日午後6時30分〜7時の「スーパーJチャンネル」の中の「齋藤ノススメ」というコーナーで紹介される。東海3県のみの放映なのが残念。
    (7日〜12日途中まで 文責:オフィス・マッチング・モウル 内藤美和)
 
追加: 島を美しくつくる会(島活性化の会)の会長松本さんから晩ご飯にご招待されたボランティアたち。平田さんとマッチングモウルも含め、8人で押しかけてしまったにもかかわらず、奥さんの由美子さんに食べきれないほどの大ごちそうを振舞っていただく。みんな身体をつかう仕事で食欲は旺盛だし、食べっぷりもものすごいのだけど、それにも増して由美子さんがこれでもかこれでもかと出してくださるお料理に、とうとう降参。食べきれないものはお土産にしていただく。とてもおいしかったです。ほんとうにご馳走さまでした。
 
そんな宴のなか、女の子三人組(高木志瑞子、杉本小百合、山口潤子)から松本さんへ、バレンタインの手づくりチョコレートの贈呈!昨晩ひそかにつくられた名前入りの特製チョコレート、受け取った松本さんも感激のご様子。
 
■ボランティア 5名/天野太一、天野陽史、高木志瑞子、杉本小百合、尾野訓大(名古屋芸術大学)
 
 
2月13日(金)

作業はみんなの頑張りのおかげで予定よりも早く進んでいる。強力な助っ人尾野くんがいるので、床の板張り作業を進めつつ、今日から瓦の塀作り作業が始まる。しかし、いざ塀作りとなると、砂利調達、セメントづくり、井戸水の汲み上げ、瓦運び…と、なかなか積み上げ作業に入れない。ここはみんなの作業分担と段取りをきちんとしておくことが重要ですな。平田さんとぶうちゃんは引き続き、出窓とくどの作業。
 
ところで、太一と陽史は佐久島入りして丸一週間、ぶうちゃんは6日目、平田さんと小百合は5日目。作業も中盤にさしかかり、ノッてきたという実感もありつつ、疲労の気配も見え隠れ。少し心配…。
 
切りのいいところまで頑張って、遅くなってしまったお昼休憩。昼食はマーボー丼と昨日松本家からお土産にいただいたおでん。みんな黙々とモリモリとひたすら食べる。お腹も満たされてほっとした休息タイム、女の子三人組から男子へバレンタインチョコレートが贈呈された。こちらも同じく手づくり。しかもマッチングモウル内藤&池田の分まで(チョコ名は「モグ」)。うれしいよー。どうもありがとう。「おいおい、太一、陽史、いっきにチョコ全部食うなよ」。みんなの元気が回復したスイートなひととき。洗濯物もよく乾いたポカポカ陽気の一日だった。
 
■ボランティア 6名/天野太一、天野陽史、高木志瑞子、杉本小百合、尾野訓大、酒井敏子
 
 
2月14日(土)

昨日の最終便で大量の食材(お菓子も!)とともに佐久島入りしてくれた社会人ボランティアの酒井敏子さん。今日は朝食から晩ごはんまでみんなの食事をつくってくれた。笑顔と激励を、そして貴重な休日を佐久島に捧げてくれる敏子お姉さん。食事をつくる合間にも障子戸の壊れたさんをなおしてくれた。
 
それから池田が仕事で一日島を留守にしている間、ガラス工房にお勤めでガラス作家の早崎さんと遠く浜松から学生の村松さんがボランティアで来てくれた。入れ替わり立ちかわり、いろんな人の手に助けてもらって大葉邸は少しずつ変化していく。
 
さて、疲れが出てきたのか昨日調子の悪かった山口も今日はみちがえるように復活。出稼ぎ(?)と買出しから帰ってきた池田を元気に出迎えてくれる。(ほっと胸をなでおろす池田)
 
【今日のごはん】
朝/美味しいパンのピザトースト
昼/ねぎと芹たっぷりの肉そば、ハム入りスペイン風(?)オムレツ
晩/敏子の特製ロールキャベツ、潤子の揚げたて牡蠣フライ(牡蠣は島の人からいただきました)、マッチングモウルから男子へバレンタインチョコレート
 
■ボランティア 6名/天野太一、天野陽史、尾野訓大、酒井敏子、早崎志保(岡崎市)、村松弘美(静岡文化芸術大学)
 
 
2月15日(日)

昨日、東日本では春一番が吹いたとニュースでいっていたけど、佐久島でも昨晩から風が強くなってきた。一晩中、ひゅーひゅーごぉーごぉーと風の音がやまず、今日も朝から強風。この時期、佐久島では天気は良くても冷たい風が吹き荒れる。そんな寒い中、塀作り作業がひたすら続く。平田さんとぶうちゃんはくどの作業。
 
午前11時、平田さん、陽史、村松さん、花ピョン(花井佐代子)の4人は、作業をいったん中止して島の人から誘われた大島の梅の苗木を植樹するボランティアとして出掛ける。大島は佐久島から桟橋で300m(?)ほど離れた小島。昔は釣りセンターもあって賑やかだったところだが、今はさびしい場所になっている。そんな小さな島を梅の木でいっぱいにしようと、海からの冷たい風をまともにうけるなか、ライオンズクラブから寄贈された梅の苗木200本を島の子どもたちと植えていく。「この梅が大きく育ったとき、子どもたちにも今日のこと佐久島のことを思い出してもらいたい」という島の人たちの思いにちょっぴりじ〜ん。作業の後はみんなで昼食をいただいた。大葉邸からしばし離れ、子どもたちと無邪気に遊ぶ平田さん。少しは気分転換になったかしら。
 
午後からは、ふたたび大葉邸。平田さんとぶうちゃん以外、塀作り作業に専念する。しかし、思うようには進まないのであった…。
  (12日追加分〜15日途中 文責:オフィス・マッチング・モウル 池田ちか)
 
■ボランティア 5名/天野太一、天野陽史、高木志瑞子、村松弘美、花井佐代子(愛知県立芸術大学)
 
 
2月16日(月)

今回の大葉邸作業のうち、ボランティア班担当の課題は大きくわけて三つ。ひとつは、3部屋を板張りにする。これは無事完了。もうひとつは、庭の塀の高さを上げる。これは、現在進行中。そして、三つ目でいちばん難題なのが、土間をうちなおすという未知の作業だ。土間うちは22日に左官さんの指導のもとにおこなうのだが、本日は、土間のための土を山で採って来て大葉邸まで運ぶという事前準備がある。その量、軽トラック3杯分。
 
島の入り組んだ細い道を、マニュアル車の軽トラで土砂を運んだりできるのは、現時点ではマッチング・モウルの内藤とボランティアでは尾野くんだけ。ということで、重機を動かして山で土採りしてくれる「島をうつくしくつくる会」副会長の鈴木喜代司さんの元へ、尾野&内藤はかけつけ、とりあえず1台分の土を満載して、大葉邸のそばまで戻る。大葉邸付近は、昔ながらの細い路地で車はまったく入れない。少し離れた場所から、4台の一輪車でピストン輸送する。それを見ていた西地区唯一の雑貨屋「つるや」のお孫さんで3歳のたいようくんも、ミニ一輪車でもって土運びのお手伝いをしてくれた。最年少ボランティア、ってわけだ。ありがとう、たいようくん!
 
前期レジデンス最終日の本日、ボランティア班は後期の準備作業と片付けに追われ、平田さんとぶうちゃんのくど&出窓担当も予定の作業を無事終了。5時22分佐久島西港発一色渡船場行きの最終便に乗り込み、いったん島を離れた。
         (16日分 文責:オフィス・マッチング・モウル 内藤美和)
 
■ボランティア 6名/天野太一、天野陽史、高木志瑞子、尾野訓大、村松弘美、花井佐代子
 
 
『佐久島空家計画3/大葉邸』制作リポート2 ヘ  ⇒
 
 
【関連情報】
 平田五郎展『佐久島空家計画3/大葉邸
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 『佐久島空家計画/大葉邸』・今後の室内見学について
 『佐久島空家計画3/大葉邸』・墨すりサポーター募集
 『佐久島空家計画3/大葉邸』制作リポート2
 平田五郎ワークショップ
  『もようのある石こうの板をつくろう 』 写真リポート

 
 2002年度 佐久島空家計画2・制作記録
 2002年度 『佐久島空家計画2/大葉邸』・写真レポート
 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・制作記録
 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・写真レポート

 

 
 
 
 
ひたすら床板をビス留めして固定
大工さんの指導で丸鋸初体験
くつろぎの昼食タイム
床板にネダを張りめぐらす
 
 
 
 
 
 
平田五郎を囲んで初めての晩ごはん
 
 
ボランティアと島民の交流
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
奥の部屋は杉板で床張り完了
真ん中の部屋の出窓部分を加工
入り口の部屋も板張り作業
 
 
 
 
 
くどの内部をセメントで下地塗り
庭の塀を高くするための基礎工事
 
 
宿舎で手づくりチョコに挑戦
 
 
 
 
 
 
佐久島小学校でワークショップ
 
 
ボランティアも黒壁運動のお手伝い
 
 
平田さんとボランティアに大ご馳走
 
てづくりチョコを直さんにプレゼント
 
 
 
長身の尾野くんは脚立いらずで作業
小百合は井戸の水汲みも上手
陽史もセメント練りを習得
チョコもらって嬉しそうな平田さん
 
村松さん(左)と志保ちゃんは塀づくり
建具まで直してしまう敏子ちゃん
左官職人の域に達しそうな平田五郎
おおっ! 美味しそうな昼ごはん
 
 
出窓部分を下地塗りするぶうちゃん
 
子どもたちと植樹をする平田さん
 
海辺でお昼ごはん。気持いいね
 
 
 
 
山で土を採るのは、喜代司さん
 
トラックから一輪車で現場へ運ぶ
 
三歳の子どもまで土運びボランティア
 
 
 
前期作業終了! 週末には戻ります
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■主催: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル

たくさん食べてがんばれ平田五郎!
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