三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2002 祭りとアートに出会う島
 
平田五郎展
佐久島空屋計画2/大葉邸
写真リポート

 
 
 
 
 
 
 

 
 

 
 
 
 
 
 
【関連情報】
 2002年度 『平田五郎展 佐久島空家計画2/大葉邸』
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 2002年度 佐久島空家計画2・制作記録 1
 2002年度 『佐久島空家計画2/大葉邸』・写真レポート
 大葉邸の室内見学について
 
 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸 ―緑の庭―』
  展覧会とアーティスト・イン・レジデンスのお知らせ

 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・制作記録
 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・写真レポート

平田五郎展 鑑賞の手引き
会場にて無料配布中
 
『―緑の庭―』がもたらしたもの
佐久島の西地区にある、迷路のような細い路地を抜けると、そこに大葉邸があります。古びた門をくぐると、目の前に現れる石畳の庭――。それが、昨年、多数の島民やボランティアの手を借り、アーティスト平田五郎によって、作り上げられた作品空間『―緑の庭―』です。
 
佐久島の浜辺で集めた石や、取り壊された民家の屋根瓦など、庭をかたちづくる素材のどれもが佐久島と強く結びついていることから、この庭は、昔からそこにあったような印象を訪れる人に与え続けました。けれど、島には他に石畳の空間は存在せず、何より、石畳を切り裂くような一本の深い溝、そしてそこから感じられる水の気配や変化の予感が、庭を特別な空間(作品)として成り立たせています。
 
ありふれた素材を使って、古くからの手法を用いながら、新しい視点を提供する――。『佐久島空家計画1/大葉邸 ―緑の庭―』は、佐久島でのアート・プロジェクトでの、ひとつの確かな方向を示したといえます。
 
眠る部屋
そして、今年、いよいよ大葉邸屋内の作品化がスタートしました。屋内は、玄関口から長方形に延びた土間と、田の字型に区切られた4室の部屋で構成されています。最初に作品化されたのは、一番奥にある仏間で、それ以外の場所は、かつての状態をそのまま残して公開します。一度に作品化しない主な理由は、予算的な問題です。しかし、佐久島でのアート・プロジェクトでは、むしろその状況を逆手に取り、少しずつ作品化される空家の姿を、時間的な変化も含めて、感じ取ってもらおうと考えました。
 
偶然にもこの方法は、今回の作品で使われる漆喰の特質とも重ねあわさることになりました。実は、3月1日から「平田五郎展」といして公開される漆喰の部屋は、実際に入ることはできず、そのようすを隣室から覗き見るという形になっています。その理由は、天井、壁だけでなく、床までも漆喰で塗られたその部屋が、乾燥し、強度を持ち、本当に人を迎え入れるまでに、一年近い月日が必要だからです。今、その場所は、いずれ訪れる人を迎え入れる準備のために、静かに眠っているのです。
 
気配を感じるための場所
平田五郎が、大葉邸の作品化に当たって選んだ素材は「漆喰」で、さらに「磨き漆喰」と呼ばれる特殊な技法が用いられました。何層にも密度を変えて塗られた漆喰壁の表面は、繰り返し磨かれることで、私たちが普段見慣れた漆喰の壁とはまったく質感の異なるものとなっています。磨かれ、艶を帯びた表面は、「光と影」を映すだけにとどまらず、そこにあるものの「色」までも映し出します。それは、ひとつひとつ手作りで作られていた頃の「鏡」を彷彿とさせるものです。
 
平田五郎は「そこに映し出されるのは、本当にささやかな気配≠セ」、と語りました。一日の間に移り変わる時間、一年の間に移り変わる季節、さらに、人のかすかな動きや、そこにあるものの持つ色――。その部屋はそれらを、あからさまにするのではなく、「気配」だけを静かに運びます。
 
それは、私たちに、初めて経験する特別な「何か」をもたらすはずです。40年振りの来訪者を迎える大葉邸には、そんな特別な場所が生まれました。
(文責:オフィス・マッチング・モウル 内藤美和)
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■主催: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル
写真撮影:田中良知
ひたすら壁を塗る平田五郎
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