Office Matching Mole on the Web/週刊モグラ屋通信 2



 週刊 モグラ屋通信 第4号 1999.11/3  


内藤です。一週間前に赤味噌パワーで養われたはずの鋭気はどこへやら。日頃の体調は「健康」に形状記憶されているはずの私にしてはめずらしく、風邪のために身動きとれず事務仕事するパワーもなし。微熱とセキのためにアートどころではない一週間でした。おとなしく家で寝ているように、という池田に厳しく注意されたので素直に従っていましたが、30日だけは自己暗示をかけて池田とともに大阪へ。とっとと新幹線で行けばいいのに、この後に及んでまだ倹約精神を発揮して近鉄を利用するところがセコイ。でも、ない袖は振れません。


大阪に行った目的は『 越後妻有アートトリエンナーレ2000 :大阪会議』。梅田で降りて目的地の梅田スカイビルもよりの出口を出たとたんに、なんかすごい人。それもラフなファッション&片手に新聞でどうみてもサラリーマンではない方々によって構成された人波。池田いわく「場外馬券売り場でも近くにあるんじゃないですか? 明日天皇賞じゃないですか?」よく知ってるじゃん。いや、しかし久しぶりの大阪は場外馬券売り場 (推定) をのぞいてもインパクトありました。梅田スカイビルへ行くにはなにやら「地下歩道」なるものを通らねばなりません。モグラ屋だから地下はいいのだけど、それにしてもあの地下歩道、あれは一体なんだ? 350メートルもあるのですよね、地下歩道が。それも名古屋みたいな地下街じゃなくて単なる歩道が350メートル。長すぎ。あそこ夜も通行可能なのだろうか? 怖すぎ。


しかし、長いトンネルを抜けるとそこは地下歩道以上にインパクトのある梅田スカイビルでこれがまた派手。That's Osaka って感じ。昼食をとろうとビルの地下の食堂街に行ったら、ここがなんとテーマパーク状態でそのテーマは「文明開花」と思われます。テーマはわかったのですが、どういうコンセプトなのかよくわからないその食堂街で文明開花的洋食を食べた後、梅田スカイビルの22階のシンポジウム会場へと向かいました。いや、しかし、すごい眺めがよかったです。淀川沿いに広がる大阪の街。川のある風景ってそれだけで得していると思います。特に街の主要エリアに川、というのが。大阪もそうだし、京都もそうですね。あ、岡崎もそうだなぁ。


越後妻有アートトリエンナーレ2000 :大阪会議』は北川フラム氏の基調講演と、その後はパネルディスカッション。芦屋美術博物館の学芸員の河崎氏による 南芦屋浜コミュニティ&アート計画 がスライドで少し紹介されていまして、私はまだここを訪れていないのですが、このプランって国内のパブリックな場でのアート、というくくりではかなり画期的だと思えます。切り口、作家のチョイスともによく考えられていることがわかるし、そのどちらにも関西ならではという地域の視点も感じます。コミュニケーションというのの捕らえ方が特徴的。都市が個性を失い均質化しているという問題もさることながら、その問題へ挑むはずのアートのプランそのものも全国同じような企画が蔓延している中で、これは大切なことです。オフィス マッチング・モウルの活動の上でも考えていかなければならないこと。


お話の中で一番印象的だったのは、阪神淡路大震災で最も被害を多く出した神戸市の住宅・都市整備公団震災復興事業として建設された南芦屋浜団地のアートワーク 、特にだんだん畑に言及して「アートワークがあるからといって生活がどう変ったか? ということはわからないが、もしなかったらということが考えられない」とアートワークに参加している住民の方の意識について語られていたことです。いつも思うのですが、アートというのはパブリックな状況であろうが、プライベートな環境の中であろうが、魔法の杖のように人の心を簡単に癒したり、開放したり、楽しくしたりするわけではありません。アートそのものは別に精神的な癒しのために存在するという風にも私自身は思っていないのです。そこにあるのは、なんらかのエナジーで、それが人の心に何かを働きかける可能性を持っている。アートにちからがあるとしたらそこです。「もし、アートがなかったら? 私には考えられない」そんな風に自然に思えるきっかけを作ることが大切なのでしょう。


いろいろと考えることの多かったレクチャーとパネルディスカッションでした。 加藤義夫芸術計画室 の加藤さんにも久しぶりにお会いできて、画廊時代に続いてまたご同業になったご挨拶など。加藤さんの「この仕事、均すと時給200円」発言に深い共感のため息をついたりして。せっかく大阪に来て、久しぶりに Shino's Bar のマスターにもお会いできたのに、ゆっくり CAS に立ち寄る前に体力が尽きて、よれよれで帰路に着いたのでした。


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 週刊 モグラ屋通信 第5号 1999.11/17  


池田の原稿がまだ難航しているらしくまた内藤が書いています。ばたばたしていたので2週間分の近況報告をまとめて。私はしつこい風邪にうんざりしながら、数日をのぞいてほとんど自宅で事務的作業。少ないアート関係のおでかけをご報告いたしましょう。11月7日私はひとりで東京へ。今年から有楽町の東京国際フォーラムへと会場を移したNICAF巡り。最終日の日曜ということもあり、なかなかの人出でした。とにかく場所がいいですね。


オフィス マッチング・モウルの ギャラリーネットワーク に情報を提供していただいている 西村画廊 ギャラリーGAN ギャラリーサンセリテ ギャラリー池田美術 佐谷画廊 アートフロントギャラリー も出展しておられました。同じくNICAF巡りしていた コオジオグラギャラリー の小椋さんとも会場でばったりお会いしたりしてご挨拶。NICAFの印象は、なかなか賑やかしくてよいでないの、という感じでしたが、国内の現代美術画廊の出品作品はやはり知ってる作家の知ってる作品という印象。濃いコレクターなら同様の印象を持つんじゃないかな? って感想を翌日会った 横田茂ギャラリー のアシスタントの田口さんに言ったら「当たり前ですよ」というすげないお返事。ま、そりゃそうだが、せっかく田舎から出てきたんだから何か変なものを見たかったのよぉ。国内でアートフェアーってホントに難しいです。名古屋もしかり。NICAFでの買い物はBTのバックナンバー1冊也(とほほ)。


日曜日は画廊も休廊のため、美術館を廻ろうと思うがなんとなく食指の動く展覧会がない。困った時の博物館。というわけで東博へ Go ! しかし日曜日の上野なんてはじめて訪れたのですが、んもう、すごい人。うわぁ、って感じで人波を見ただけでげんなりしてしまったけど、動物園と 国立西洋美術館 (『オルセー美術館展1999−19世紀の夢と現実』を開催中)に比べれば、私の目指す 東京国立博物館 は、まだ静かだったんでしょう。企画展は平成館にて『金と銀−かがやきの日本美術−』。工芸品の数々はもちろん素晴らしかったけれど、やっぱり見ていて面白いのは絵画でした。長谷川等伯、酒井抱一、円山応挙に尾形光琳のソウソウたる顔ぶれ。あ、曾我蕭白もあってラッキー! こういうの見てると「がんばれ、現代美術」とか思っちゃいます。ま、彼らも当時の現代美術だった、ってことでひとつ。


同じく平成館での『日本列島60万年−考古遺物でつづる歴史絵巻』から本館の平常陳列までくまなく廻って、ちょっと本日の美術品鑑賞許容量限界って感じ。ミュージアムショップで日本手拭い一枚購入した後、閉館時間の東博を後にしたのでした。その後、新宿にある東京オペラシティアートギャラリーへ。企画展は『Releasing Senses 感覚の解放』。個人的な好みはアーニャ・ガラッチオの『望みを持って』かな。マルティン・ヴァルデの『結んでほどいて』作品は、床に座り込んで3つほどロープを三つ編にしてきました(行ってない人にはなんのことやら、でしょうが)。


翌日は青山の レントゲンクンストラウム にて中山ダイスケ展。その後、スパイラルへ。展覧会のタイトルを忘れてしまった。作品は覚えてるんだけど。ちゃんとレインコート借りて作品の中に入ってみたし……。月曜日は美術館に加えて画廊も休みのところが多いのが残念。仕方がないのでお蕎麦なんぞ食べて街をさまよう。夕方、横田茂ギャラリーにて中西夏之展。行きはJRを使ったのですが、帰りはゆりかもめで銀座へ向かいました。はじめてのゆりかもめ乗車(だからなんだ?)。 横田茂ギャラリー のアシスタントの田口さんから懇切丁寧に新橋から銀座7丁目までの行き方を伺ったにもかかわらず、案の定新橋駅で大混乱。しかし、なんとか無事に ギャラリーGAN へたどり着き、土屋公雄展のオープニング・パーティーに出席。これまでにないタイプの土屋公雄作品ですがコンセプトは一貫しており、ゆっくり時間をかけて(ここが重要)見ていただきたい作品です。会場でお会いしたのは作家の眞板雅文さんとか、「G9系の作家もよいけど、たまには土屋さんも見て」と連絡したら来てくださった この方 とか、私の エージェント氏 とか ノブギャラリー の元ボスとか。にぎやかに銀座の夜はふける。


私が東京でうろうろしていた頃、池田が何をしていたかというとこちらは『第51回 正倉院展』を開催中だった 奈良国立博物館 におでかけしていたそうです。ふたりして西と東で国立博物館巡りとは偶然でした。また、大阪の 国立国際美術館 では『高松次郎 <影>の絵画とドローイング』展も見たそうで、この展覧会はとても良かったとのこと。大満足しておりました。池田における高松次郎株は急上昇。この展覧会は他からもよかったという話を聞いていて、見逃せない展覧会と評判です。


13日には久しぶりに池田とふたりで朝から 弁天海港佐久島 生活と芸術 第二回 アートフェスティバル のために三河湾に浮かぶ佐久島へでかけました。宇宙からの電波系パフォーマンスを最前列で見ながら寝ていたのは私です。でも、その日はものすごくいい天気で、佐久島を東から西まで歩いて横断したのですが本当に気持ちのいい風景に感動(アートはどうした?)。何度でも訪れたくなる素晴らしいことろです 佐久島 は。美味しいお蕎麦屋さんの昼食庵がお休みだったのが残念でした。あ、書き忘れるところでしたがアートフェスティバルでは大野慶人の舞踏がとてもよかったです。緊張感と柔らかさの両方を感じたし、すがすがしい余韻が残りました。いいもののことはちゃんと書いておかなくちゃね。大野慶人の舞踏を見られたのでよしとしましょう。


島から戻って車で春日井市のギャラリー、 N-MARK の『中野良寿展 ―ハリガネに訊け! Abvery発 ダウジングによる旅―』へでかけました。私も針金両手に持ってダウジングしたのですが、これといった感慨はありませんでした。幸か不幸か私には霊感はないんです。方や霊感ばりばりの池田ですが、ダウジングそのものには感慨はなかったようです。ダウジングに感慨がないとあまり入りこめないですね、この企画は。もう少し作家に詳しい話を聞くとよかったのですが、宇宙からの毒気に当てられてふたりとも疲れ果てておりました。どうやらこの日はオカルト・デーだった模様。ではまた来週!


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 週刊 モグラ屋通信 第6号 1999.11/24  


内藤です。11月19日は名古屋都市センターで開催されたシンポジウム『場の個性への挑戦 21世紀のまちづくりシンポジウム』へ池田とともに出席。少し早めに会場に到着した私は、都市センターのある金山南ビルの中の名古屋ボストン美術館で『岡倉天心とボストン美術館』展を見ました。平日でしたが、なかなかの人出。内容はタイトルそのまんま。朦朧体の横山大観がよろしかったのではないでしょうか。


シンポジウムは一部と二部に分かれていて、一部ははアートフロントギャラリーの北川フラム氏による『アートで地域おこし ―越後妻有「大地の芸術祭」―』、名古屋市美術館のキュレーター、竹葉丈氏による『現代美術の模索と可能性 ―《場》から《環境》へ―』、日本福祉大学情報科学部助教授の佐々木葉氏による『《場》に参加する市民 ―まちづくりの新しい動き―』でした。二部のパネルディスカッションは北川フラム氏、佐々木葉氏に加えて藤井英明氏(株式会社ゲイン代表)、堀越哲美氏(名古屋工業大学教授)による『場の個性への挑戦 21世紀のまちづくりシンポジウム』でした。


先月、大阪であったシンポジウムと内容的にはだぶるものの、パネラーの顔ぶれが大阪は完全にアート関係者だったのに比べて、名古屋はどちらかというと建築とか情報とかそちら方面の方々で、また別の面白さがあり。初めて訪れた名古屋都市センターですが、設備が整ってますねー! 100人規模の会議だったら、かなり使い勝手が良い会場でございました。大阪同様に高層建築なので窓からの眺めは抜群。シンポジウムの後の交流会にも出席いたしまして、久しぶりにお会いする方々にモグラ屋はじめました、のご挨拶など。


集まっている人たちは「まちづくり」に関心がある、ということで、必ずしもまちづくりにアートが関わることに賛同する人ばかりではありません。案の定、「アジアでは飢えている子ども達がいるのに、アートなんぞに金を使うとは」的意見の人の主張に接近遭遇するはめになる私。外国の貧しさや豊かさを引き合いに出すのは(もちろん、時には私もしちゃうんですが。主に「豊かさ」を引き合いに出して)なんの解決にもならないです。名古屋というのは、本当にいろんな意味で恵まれた環境にあって、自分たちはそういう都市生活を享受しながら、国内にあっても深刻な過疎や経済の問題を抱え込んだ地方(たとえば越後妻有などの)とバングラデシュをいきなり並べて批判することの乱暴さがわからんかね、おっさん? 誰もが、世界中の問題を引き受けるわけにはいかないです。とりあえず、私は来年新潟へ行って、越後妻有地区で思いきりアートに出会って、温泉入って、 ダニエル・ビュレンヌのストライプ浴衣 など購入して、「いいですねぇ、日本の夏」をやるんだ、文句ある?


交流会の後は、北川さんと26日に 岡崎商工会議所で開催されるレクチャー の打ち合わせ。その後、池田とふたりで金山南ビル1階のホテルのティールームでコーヒータイム。あ、ここってコーヒーのおかわりできるんだ、ラッキーでした。


翌日から池田は単独で東京行き。かなりハードなスケジュールをこなしていた模様。まずは水戸芸術館現代美術ギャラリーで始まった 『日本ゼロ年』展 のオープニング・パーティーに出席。その後、ヒルサイドテラスにて開催中の『代官山アートフェアー '99』の特別企画『スピークアウト "今夜はトーク・ハード"』を聞きくために再び都内に戻ったそうです。<セッション 2>の『ギャラリストの麦と兵隊 チビッコギャラリーは新たなフレームを提示できるかい?』のパネラーは 小山登美夫ギャラリー の小山登美夫氏、 オオタファインアーツ の大田秀則氏、 マサタカハヤカワギャラリー の早川昌孝氏、 アートフロントギャラリー の北川フラム氏。パネルディスカッションは夜の10時半まで続いたそうで、話す方も聞くほうもお疲れさまでした。


池田は月曜日に東京から「すっごい二日酔い」で帰還。夕方には事務所で東京行きの報告会を兼ねた打ち合わせいろいろ。やはり、まったりとして平和な名古屋と違い、東京はなかなかに刺激を与えてくれたようで、来年のモグラ屋活動のアイデアなどいろいろ飛び出してきて楽しいことです。



     
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